魔の縦列駐車


運転そのものは慣れれば右も左もあまり関係なかった。
問題は車を停めるほうにあった。

まずは自宅駐車場。
最初の家は敷地内に駐車場があったが、細い私道を通らなければならなかった。
こちらは私は経験なし。
二軒目の家は敷地内に駐車場がなく、家の外に路駐だった。
ああ、忌まわしきフランスの路駐!
「縦列駐車」が待っていた。

日本でも教習のときに路駐縦列駐車の練習をさせられたような気がするが、
私は大の苦手で、試験さえ通ればいいというスタンスだった。
だからもちろん免許は手に入れても縦列はできなかった。
普段は縦列なんか出来なくても、全く困らなかったからだ。

しかしフランスでは駐車といえばまず縦列なんじゃないかと思うほど、
路肩に車がずら〜と並んでいる。
これができないと車に乗れない。
幸いうちの駐車スペースは自宅門前だったので、一般の駐車スペースよりは
多少ゆとりがある。
隣の家が車を停めなかったので、その分のゆとりもあった。
そこでまずは練習を試みる。
ダンナの縦列を見よう見まね。
なかなか入らない。
寄せるのがまず難しい。
何度もやり直しているうちに汗びっしょりだ。
かつて教習のときに後ろの三角窓に棒が三本見えたらハンドルを切れと習ったが、
その棒はあくまで教習用の棒であって、普通は見えないのだ。
こういう場合、何を目印にしたらいいのだろう?

ダンナからは一応口頭で縦列のコツを習う。
しかし口頭ではよくわからない。
あとは習うより慣れよ、とひたすら毎日最低二回は縦列をする。
送迎のたびに家に帰ってくるからやむを得ない。
最初は自分の停めるスペースの周りに何も停まってないと本当にうれしかったものだ。

そのうちたま〜に前後に車が停まっている限られたスペースでも、
最小限の切り返しでぴたっと入れられることが出てくる。
あまりにうまくいったときは、どうしてこうなったのか自分でもわからない。
だから次回の参考にはまったくならないが、やはり経験は強いようで、
だんだん悩まずに縦列が出来るようになっていった。

フランスでお気楽なのは、縦列駐車するときもそこから出るときも、
前後の車のバンパーに当てながら出し入れできることだ。
もちろんへこむほど強く当ててはいけないけれど、
そろそろと動きながら前後の車のバンパーにぶつかれば、そこが限界とわかる。
これができると、ものすごく詰められて駐車されても、どうにか脱出できる。
私も車を出すときはバンパー当てによくお世話になった。
さすがに入れるときにバンパーに当てながら少しずつスペースを広げて
無理やり駐車する、という技はとうとう出来なかったが。
また、多少ゆとりのあるスペースでも、前後がベンツのときは停められなかった。
ぶつけるのが怖かったからだ。
フランスでは自動車メーカーのひとつでしかなかったのだが、
やっぱり日本でのイメージが強すぎるのか…(やくざが出てきたらどうしようなんて思ってた)。

ちなみに、スーパーや地下駐車場などで普通に横に並んで駐車する場合、
圧倒的に頭から入れて停める車が多い。
このほうが盗まれにくいと聞いたが、これがけっこう難しいのだ。
駐車スペースに対してかなり直角の位置に車を持っていかないと横の車にぶつかりそう。
がらがらのときは頭から入れていたけど、後ろから入れることも多かった。
運転を始めてわりと最初の頃に駐車場でバック駐車を体験したが、
なぜかやり慣れている動作は右ハンドルでも左ハンドルでも大差なく出来るのだと
妙に感心したのだった。